公開日 更新日

移住前に確認したい移住支援制度とは?申請手順や注意点について解説

昨今、地方移住を考える人が増えてきています。地方へ移住する際の支援制度には、どのようなものがあるのでしょうか。

 

この記事では、主要な支援制度からユニークな支援制度までご紹介していきます。
申請手順や注意点も含めて解説しているので、ぜひご参考ください。

移住支援制度とは

「移住支援制度」とは、地方へ移住する人が、定められた要件を満たしている場合に補助金等の支援を受けられる制度です。国が主体となるものや、各地方自治体が独自に行っているものがあります。

国が主体の移住支援制度

ここでは、国が主体となって行われている移住支援制度について見ていきましょう。

移住支援金

移住支援金とは、東京23区に在住または通勤する人が、東京圏外へ移住し、起業や就業等を行う場合に、都道府県・市町村が共同で交付金を支給する事業です。
少なくとも申請後5年間は移住先の市区町村に居住することを条件に、世帯の場合は100万円以内、単身の場合は60万円以内で都道府県が設定する額が交付されます。

 

移住支援金を申請できるのは、転入後3か月以上1年以内となっているため、5年以上地方で暮らす方は、早めに申請することをおすすめします。

起業支援金

「起業支援金」は、都道府県が地域の課題解決に貢献する社会的な事業に対して、新たに起業等する人を対象とした事業です。起業等のための支援と事業費助成を通して、効果的な起業等を促進し、地域課題の解決を通して地方創生を実現することを目的とした事業です。

 

起業する事業の分野は、子育て支援や地域産品を活用する飲食店、買い物弱者支援、まちづくり推進など、地域ごとに抱えている課題に応じた幅広いものを想定しています。都道府県が選定する執行団体が、計画の審査や事業立ち上げに向けた伴走支援を行うとともに、起業等に必要な経費の2分の1に相当する額を交付します。上限は200万円です。

 

新たに起業して申請しようとする場合、「東京圏以外の道府県又は東京圏内の 条件不利地域において社会的事業の起業を行うこと」、「国の交付決定日以降、補助事業期間完了日までに、個人開業届又は法人の設立を行うこと」、「起業地の都道府県内に居住していること、又は居住する予定であること。」が条件となっています。首都圏都市部から地方に移住し、移住した先で起業することが想定されていると考えてよいでしょう。

 

また、事業継承や二次創業を行う場合の条件は「東京圏以外の道府県又は東京圏の条件不利地域において、Society5.0関連業種等の付加価値の高い分野で、社会的事業を 事業承継又は第二創業により実施すること。」「国の交付決定日以降、補助事業期間完了日までに、事業承継又は第二創業を行うもの。」「本事業を行う都道府県内に居住していること、又は居住する予定であること。」となっており、やはり首都圏都市部から地方に移住し、そこで事業を行うことが求められています。

地方自治体が主体の移住支援制度

続いて、各地方自治体が主体となって進められている移住支援制度について見ていきましょう。それぞれの地方自治体によって行われている移住支援制度は異なりますので、必ず自分の移住を希望する自治体ではどうなっているのか、確認するようにしてください。

住居に関する支援

地方へ移住するには、移住先での住居を確保する必要があります。住宅に関する支援には、次のようなものが挙げられます。

 

「家賃補助」
家賃補助制度を設けている自治体に移住すれば、家賃の一部を助成してもらうことができます。この制度には期間が定められていることがほとんどです。

 

鹿児島県湧水町では「湧水町定住促進家賃助成事業補助金」として、令和5年3月1日以降に本町に転入した、5年以上居住する意思がある人を対象に家賃の補助を出しています。最長12ヶ月、最高2万円の補助が受けられます。

 

「引越し費用補助」
自治体によっては、引っ越し費用を補助してもらえる場合もあります。金額や申請時期などに制限があるところもあるので、該当する場合はきちんと確認しておきましょう。

 

高知県土佐清水市では「移住促進支援事業補助金」として、高知県外から土佐清水市に転入(U・Iターン)した際に要した引越し費用の補助制度があります。

 

「住宅購入補助」
移住の際に、賃貸の物件へ引っ越すのではなく、住宅を取得する場合に受けられる補助金制度です。

 

新潟県小千谷市では、「定住促進マイホーム取得補助金」制度があり、転入者は新築または建売の住宅を購入する際に30万円、中古住宅を購入する際に20万円が補助されます。

 

「リフォーム工事費補助」
移住の際に住宅を取得または譲り受けて、リフォームして住む場合、リフォーム代に対して受けられる補助金制度です。地方では古い物件も多く、隙間風が吹いたり、バリアフリーでなかったりということがあります。

 

鹿児島県薩摩川内市では「定住住宅リフォーム補助金」として、令和5年4月から令和8年3月末までの転入者が市内の業者を使ってリフォームした場合、補助金を出しています。

 

これらの制度は各年度で予算が定められている場合が多く、希望すれば誰でも使えるというわけでもありません。実際に、年度末になると「今年度の募集は締め切りました」とされている制度も多いです。各種支援制度の利用を考えるのであれば、移住の時期にも注意した方がよいでしょう。

就業・起業に関する支援

移住した後に就業・起業しやすいように、支援策を取っている自治体もあります。具体的には、以下のような支援があります。

 

「就職祝い金の給付」
自治体の事業所に就職が決まった場合に、お祝い金を給付する自治体があります
山梨県北杜市には、「定住促進就職祝金制度」があります。卒業後1年以内の新規学卒者には30,000円、市外から転入してきた就職時に40歳未満の人が市内の事業所に就職した場合は20,000円が給付されます。

 

「就農サポート(初期費用補助、農地の紹介、初心者向け講習など)」
新たに農業に従事しようとする方向けに、費用の補助や新規農地の紹介、農地継承のマッチング、各種講習会の開催などを行い、農業従事者を増やそうという試みです。

 

栃木県では、後継者が確保できない農業者と強い意欲を持って農業経営を開始しようとする人とをマッチングしたり、新規就農者とベテラン就農者の交流会を開催したりと、さまざまな側面から就農をサポートしています。

 

「奨学金返済助成」
Uターン、Iターン転入者を対象に、奨学金の返済を補助する制度を設けている自治体も多くあります。

 

新潟県では、県外で1年以上働いたことのある30歳以下のUターンして就業した人を対象に奨学金の返済補助をしています。

 

「求職サポート」
地元での仕事を移住者に斡旋することにより、移住者を増やそうという試みです。
福岡県は就職マッチングサイトを立ち上げ、東京・名古屋・大阪といった大都市圏からの移住を促しています。

子育てに関する支援

子育てに関する支援制度として、以下のようなものが挙げられます。

 

「出産祝い金」
子どもが生まれた時に自治体から出るお祝い金です。
広島県庄原市では、第1子・第2子で10万円、第3子以降で25万円のお祝い金が出ます。第1子から出る自治体は珍しく、注目が集まっています。

 

「結婚祝い金」
自治体に住所がある、結婚した夫婦を対象に結婚祝い金を出す自治体があります。
山梨県身延町では、指定された条件を満たす夫婦に対し、住居費及び引越費用を補助しています。

 

「医療費・教育費補助」
子どもの医療費・教育費の補助を出すことで、子育て世代の負担を軽くする事業です。

 

最近では医療費補助を高校卒業までにする自治体も多いです。北海道南富良野町は22歳まで医療費補助が受けられるなど、突出した政策をとる自治体も少なくありません。

 

また、自治体独自の就学・進学祝い金や、就学支援制度を設けているところもあります。山梨県丹波山村では、小中学校の教材費(学用品代、給食費、修学旅行費など)が無償です。

 

関連記事:子育て世代が移住する前に知っておきたいメリット・デメリット

移住支援制度の選び方

各自治体によってさまざまな移住支援制度が整えられていることがわかりました。どう選んでいけばよいのでしょうか。

各自治体のホームページを確認する

まずは移住先として目星をつけた各自治体のホームページを確認しましょう。ホームページ上では一通りの支援の概要が見られますので、そこの自治体がどんな移住支援を実施しているか確認することができます。

移住情報サイトを活用する

移住情報サイトを活用しましょう。移住の体験談、支援制度の概要などが見られます。また、「宿泊体験」「就農体験」などの募集情報が掲載されている場合もあります。

 

自治体のホームページが、制度を用意した側からの視点で書かれているのに対し、移住情報サイトは制度を利用する側、利用した側での視点から書かれているので、双方の情報を得ることで、支援制度の全容がより明確になります。

説明会や移住体験に参加してみる

移住先としてよさそうだなと思う自治体があったら、ぜひ説明会や移住体験に参加してみましょう。自治体によっては、宿泊体験ができたり、職員の方による案内ツアーがあったりします。実際に話を聞いたり、自分で体験したりすることにより、理解が深まります。

 

また、説明会はできれば複数の自治体のものに参加しましょう。比較対象ができることで、各自治体のいい面も悪い面もより明確に見えてきます。浮かんできた悪い面は、工夫で乗り切れるものなのか、自分たちの条件には合わないものなのかも判断できます。

地方に移住する際に押さえておきたいメリット・デメリット

さまざまな支援策が出ている地方移住は、いい面ばかりが強調されがちですが、メリットばかりではありません。ここでは、地方移住のメリット・デメリットを見ていきましょう。

地方移住のメリット

地方に移住する主なメリットは、「広く交友関係を持つことができる」「自然に恵まれた環境で生活できる」「物価が安い」「子育てがしやすい」です。
地方では、都市部と比べて隣近所のつながりがしっかりとしているところが多い傾向にあります。地域ぐるみの行事なども多く、広く交友関係を持つことができるでしょう。

 

また、自然に恵まれた環境にあることが多いので、わざわざ遠出せずとも海や山、川などの自然と触れあうことができます。

 

物価も都心部に比較すると安く、特に野菜は直売所で新鮮なものを購入できる地域も多いです。

 

落ち着いた環境の中でゆったりのびのびと子育てができます。また、待機児童が少ないため、保育園に預けられなくて仕事に復帰できない、ということはなさそうです。

地方移住のデメリット

地方移住のデメリットとしては、「教育施設や文化施設、学校の数が限られる」「公共の交通機関が発達していない」です。

 

博物館や美術館、映画館のような、芸術鑑賞をしたり娯楽を楽しんだりするような施設が、地方にはあまりないことが多いです。地方では近くに美術館がない、映画館がない、というところもたくさんあります。学校についても、都市部ほどの選択肢はないため、どのような教育方針なのかも移住を決める際には大事な観点です。

 

また、公共の交通機関が都市部ほど発達していないので、都心部のような感覚ではスケジュールが組めません。車での移動が基本となるので、車の運転が苦手な人にとっては辛いかもしれません。

 

メリット・デメリットをよく理解し、移住という選択が自分たちに合っているか、よく検討しましょう。

移住支援制度を利用する際の注意点

魅力的に思える移住支援制度ですが、利用する際には何が必要なのでしょうか。

利用条件と申請時期を確認する

移住支援制度の利用を考える時には、必ず利用条件と申請時期を確認しましょう。
移住支援制度の中には、各年度で予算が決まっているものもたくさんあります。また、申請できる人に条件がついているものもたくさんあります。

 

どのような条件の人が申請可能で、どれくらいの時期に申請すれば通りやすいのか、よく検討しましょう。

移住支援の申請は2024年までに

ここまでご紹介してきた移住支援の政策の中には、ひとまず2024年までというものがいくつかあります。国が主導する移住支援金、起業支援金も2024年で一旦終わりとされており、2025年以降どのようになるのかはまだわかりません。

 

具体的な移住プランが定まっているのであれば、2024年中に移住することをお勧めします。

各自治体の個性的な移住支援制度

ここでは、ユニークな自治体独自の移住支援制度の具体例をご紹介します。

【北海道歌志内市】住宅取得奨励金

日本で一番小さい市・歌志内市では、定住人口の増加を図るために、市内に住宅を取得した人に奨励金を交付しています。特に、市が分譲・販売している住宅用地を購入した場合、最大で500万円が交付されます。500万円という金額は住宅取得のための補助金としてはかなり大きいため注目されています。

【茨城県日立市】ひたちテレワーク移住促進助成金

「ひたちテレワーク移住促進助成事業」は、茨城県日立市が行う日立市に移住してテレワークをしながら暮らす人を対象にした助成制度です。
テレワーク助成として、通信機器整備費20万円、交通費相当額10万円、コワーキング施設利用料10万円などを助成するのが特徴で、住居費や水道代なども補助されます。

 

東京駅から日立市までは、特急ひたちに乗れば乗り換えなし、2時間弱で着きます。特急料金はかかりますが、毎日のことではありませんし、交通費相当額の助成もあります。在来線で行っても2時間強です。テレワーク可能な職場に勤めていて、都内よりも自然あふれる地域で暮らしたいという人にとっては、日立市の「ひたちテレワーク移住促進助成事業」を検討してみてはいかがでしょうか。

【鹿児島県三島村】30万円または子牛1頭支給

三島村は、薩摩半島から南へ約40キロ、硫黄島と竹島、黒島の3つの島からなる小さな村です。特産物のひとつに黒毛和牛があり、畜産業が盛んです。

 

三島村定住促進対策事業のひとつに、1世帯に30万円または子牛1頭、2人世帯の場合は子牛1頭または50万円支給というユニークな施策があります。他にも、引越し費用の支度金とフェリーみしまの各種運賃の合計もしくは100,000円のいずれか、そして3年分の生活助成金など、充実した制度が整っています。

支援制度をうまく活用して移住しよう!

国が主体となる支援金をはじめ、さまざまな支援金があることがわかりました。また、2024年というのは、支援制度を利用して移住する上で、非常に重要な年であることもわかりました。

 

移住は金銭的にも大きな負担がかかりますが、支援制度をうまく活用していきたいですね。

 

上郡町でも移住・定住の支援をしています。興味をお持ちであれば、いつでもお問い合わせください。

Copyright (c) 2023 KAMIGORI TOWN. All Rights Reserved.