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移住後に新たに農業を始める方法と補助金について解説!

リモートワークが進むにつれて増えている地方移住。移住をきっかけとして農業を始める人も多く、年間約6〜7万人の人が地方移住し、新規に農業に就業しているのだそうです。

 

しかし、「興味はあるけど、やっていけるのだろうか」と心配な人も多いのではないでしょうか。この記事では、地方移住とともに農業を始めるのに、どのようなスタイルがあるのか、新規就農者でも受けられる補助金にはどのようなものがあるのか解説します。

 

地方移住からの就農の実態を知り、補助金制度に関する知識を身につけることで、より具体的に地方移住について考えられるようになるでしょう。

農業のスタイル

移住して新たに農業を始める、と言っても、農業のスタイルはさまざまです。
ここでは、どのような農業のスタイルがあるのか見ていきましょう。

趣味として

まずご紹介するのは、農業とは別に仕事を持ち、「趣味」として農業に取り組むスタイルです。家庭菜園の延長のような形なので、今まで家庭菜園をしていた人には取り組みやすいスタイルです。

 

採れた収穫物は家族や友人、近所の人に配る程度です。農業で採れた収穫物を収入の柱とは考えません。収穫の出来不出来が生活に影響することもありませんので、一番気楽に取り組めるスタイルと言えるでしょう。

仕事として

続いてご紹介するのは、仕事として農業に取り組むスタイルです。
農家の元で就業するタイプと、自分で起業するタイプがあります。

 

農家の中には、法人化し人を雇って大規模に農業を展開しているところも多くあります。そういったところに就職したり、アルバイトをしたりすることで、農業に携わることができます。お給料をもらいながら、農業を学ぶことができる点がメリットです。また、農業法人の中には人材育成に力を入れているところも多く、将来独り立ちするための支援をしてくれるところもあります。

 

自分で起業する場合は、農地や設備を準備して農業を始めます。育てる作物や作業のタイムスケジュールなどを自分で決められるのが大きな利点です。農業従事者が減っていることから、新規就農者への支援制度が整っている自治体も多く、新規就農者として認定を受ければ農業経営基盤強化準備金制度を利用した税制面での優遇措置もあります。

 

また、耕作する人がいなくなった農地を譲り受けることもできます。ある程度土壌ができていたり、場合によっては設備も一緒に引きとれる場合もあり、1から準備するよりも早く農業を軌道に載せることができます。
農地を譲渡するためのマッチングサービスもあるため、利用してみてはいかがでしょうか。

 

関連記事:地方移住でのお仕事事情は?職探しの方法とおすすめの職業12選

別の仕事をしながら

別の仕事をしながら農業に従事する場合には、兼業農家となります。兼業農家には、農業が主な収入源である第1種兼業農家と、農業以外の収入が主となる第2種兼業農家に分けられます。

 

兼業農家は、会社勤めをしながら出勤の前後や週末の時間を農業に充てるスタイルや、昼間は農業をして夜間にクリエイター業やライター業をこなすスタイル、農業の繁忙期には農業に専念し農閑期に大工やリゾート地での仕事をするスタイルというように、さまざまな兼業の仕方があります。

半農半X

半農半Xは、今注目されているスタイルです。「半農」って、兼業農家となにが違うのか疑問に思われる方も多いのではないでしょうか。

 

半農半Xとは、なにか他のことをしながら、半分の労力で農業をしよう、という考え方です。「自分たちが食べる分だけを小さい労力で作れればそれでいい」という考え方で、都市部から地方へ移住した人にこのスタイルを選択する人が多いです。

 

余った労力を別のこと(X)に使い、より充実した生活を送ることができます。
半Xの時間には、サラリーマンとしてリモートワークで働く人も増えました。都市部でしていた仕事をそのまま続けている人も多いです。また、時間の制約がなく自分のペースで仕事ができるクリエイター、民宿やレストランの経営をする人もいます。

 

兼業農家との違いは、自分で作った農作物を商品として流通に乗せ、収入を得る手段としているかどうかです。
半農半Xの人は、基本的に自分たちが食べる分の生産を目的としているので、売って収入を得るというよりは、必要な食料を自給自足するというイメージです。

新たに農業を始める

新たに農業を始める際は、農地や設備を購入して新規で農業をスタートすることになります。

 

ただし、全くの未経験からの新規就農は土地や設備の購入費が高額になりやすい、作物が収穫できるようになるまでは収入が得られないなど、障壁が高いです。また、農作物の収穫量は気候に左右されやすいため、収入がどれくらいになるかわからないというリスクもあります。

 

慣れないうちは農業法人等に従事し、農業のノウハウを学ぶことをおすすめします。

移住後に農業を始める前に必要な手順

「地方に移住して農業をする」といっても、家庭菜園のような小さいものから、農業だけで生計を立てていく専業農家まで、いろいろな種類の農家さんがいることがわかりました。

 

では、実際に地方へ移住して農業を始めようと考える人がやるべきこととは何でしょうか。

農業のスタイルを決める

まずは、どのような種類の農業にするのかを決めましょう。
専業農家として農業に取り組む、どこかの農業法人で働いて農業のノウハウを学ぶ、趣味として農業に取り組むなど、それぞれの農業のスタイルによって、準備するものも異なります。

 

今置かれている状況や、将来どのように農業に関わっていきたいか、よく考えましょう。

情報収集を行う

農業について、なるべく多くの情報を仕入れましょう
農業に関しては、新規就農者の応援サイトや農林水産省のサイトが参考になります。また、農業に関する求人サイト、事業の後継者募集サイト(農地継承も含まれています)などを参考にするとよいでしょう。

 

また、移住先についても、どのような地域なのか、気候はどうか、交通事情はどうか、なるべく多くの情報を集めましょう。

移住先を決める

ある程度の情報が揃えられたら、移住先を決めましょう
このとき、自分一人ではなく家族がいる場合は、必ず家族全員の意見を聞いてから決めましょう。時折見られるのが、誰かが主導して勝手に移住を決めてしまうパターンです。移住してからの家族関係に亀裂が生じる恐れがあるため、必ず家族全員で話し合いましょう。

移住先のマッチングサイトで候補を絞っていくのもひとつの方法です。
また、自治体によっては「移住体験」として、実際に民家に宿泊して生活したり、地域を案内してくれたりするツアーを開催しているところもあります。

教育環境が不安、という方には「山村留学」の制度もあります。子どもが山村や漁村で生活しながら現地の学校へ通うというもので、1年単位の長期のものから、長期休業中に行われるもの、数日単位のものとプランはさまざまです。これらを利用して先に子どもが環境に馴染めるかを確認して、それから移住することができます。移住の実現まで時間はかかりますが、より満足度の高い移住のためには、無駄な時間ではないはずですよ。

農業体験に参加する

移住先で何らかの形で農業をしたい!と考えている人向けに、農業体験が開かれている自治体もあります。

 

「実際にその土地で農業をするなら」をより具体的にイメージするチャンスですので、もし移住検討先が実施していれば、ぜひ参加しましょう。

 

実際に体験してみることで、イメージ通りな点もあれば、イメージと違ったという点も出てくるでしょう。イメージと違う点が、工夫次第でカバーできそうなものなのか、致命的なものなのか、よく検討しましょう。

新たに農業を始める方に向けた支援制度

実際に移住し、農業を始めるとなった場合、どんな支援が受けられるでしょうか。ここでは、新規就農者向けの支援制度や、農業従事者向けの支援制度をご紹介します。

強い農業づくり総合支援交付金

「強い農業づくり総合支援交付金」は農業生産地の収益力強化と持続的な発展、食品流通の合理化のため、「強い農業づくり」に必要な産地での基幹施設、卸売市場施設の整備などを支援する、農林水産省主導で進められている事業です。施設の整備の他に、地域農業者の減少や労働力不足等生産構造の急速な変化に対応する生産事業モデルや農業支援サービス事業の育成を支援しています。

 

「強い農業づくり総合支援交付金」は都道府県向け交付金の「産地基幹施設等支援タイプ」「卸売市場等支援タイプ」、国が直接採択する「生産事業モデル支援タイプ」「農業支援サービス事業支援タイプ」があります。

 

以下、それぞれの支援制度について見ていきましょう。

 

産地基幹施設等支援

産地基幹施設等支援タイプは、都道府県・市町村・農業者の組織する団体(農業協同組合・農事組合法人・農地所有適格法人・その他農業者の組織する団体)、公社等が主体となって実施させる集出荷施設など農業用の産地基幹施設に対して交付される交付金です。

 

市町村経由で事業実施計画を都道府県へ提出し、審査を受けて認められれば補助率1/2、金額にして20億円を上限に交付金が出ます。

 

中でも以下の施設は重点政策として、着実な推進が求められています。

  • みどりの食料システム戦略推進に必要な施設
  • スマート農業技術の導入に必要な施設
  • 産地における戦略的な人材育成に必要な施設

卸売市場等支援

「卸売市場等支援」は、品質・衛生管理の強化等を図る卸売市場施設、産地・消費地での共同配送等に必要なストックポイント等の整備を支援する交付金です。申請が通れば、補助率4/10以内、金額にして20億円を上限とした支援が受けられます。

 

生産事業モデル支援

「生産事業モデル支援」は、核となる事業者が連携する生産者の作業支援などさまざまな機能を発揮しつつ、安定的な生産・供給を実現しようとする生産事業モデルの育成を支援するタイプの交付金です。具体的には、農業用機械の導入や導入効果の実証といった推進事業、農業用施設の整備費用が想定されています。

 

補助率は定額または1/2以内で、補助額の上限は推進事業で5,000万円、整備事業で20億円となっています。

 

農業支援サービス事業支援

「農業支援サービス事業支援タイプ」は、農業支援サービス事業の育成に必要な農業用機械の導入の際に補助が受けられる支援システムです。

 

補助率は1/2以内、補助額の上限は1,500万円となっています。

 

大規模な施設から、個々の農地で使用する農業用機械まで幅広く対応している制度ですので、「これは対象になるだろうか」と思うものがあれば、市区町村の担当窓口に問い合わせしてみるとよいでしょう。

農業次世代人材投資資金

「農業次世代人材投資資金」は、次世代を担う農業者となることを志向する者に対し、就農前の研修を後押しする資金(2年以内)及び就農直後の経営確立を支援する資金(3年以内)を交付するものです。

 

「準備型」「経営開始型」の2パターンがありますので、それぞれ見ていきましょう。

 

準備型

「準備型」とは、道府県農業大学校や先進農家などで研修を受ける場合、研修期間中に月12.5万円(年間最大150万円)を最長2年間交付するタイプです。

 

交付対象者の条件がいくつかある中に「独立・自営就農、雇用就農又は親元での就農を目指すこと」があり、「 独立・自営就農を目指す者については、就農後5年以内に認定農業者又は認定新規就農者になること」「親元就農を目指す者については、就農後5年以内に経営を継承する、農業法人の共同経営者になる又は独立・自営就農し、認定農業者又は認定新規就農者になること」とあります。

 

適切な研修を行っていない場合や研修終了後1年以内に就農しなかった場合、交付期間の1.5倍(最低2年間)の期間、就農を継続しない場合には返還を求められるなど、厳しい面もあります。しかし、近い将来農業で独立しようと考えている人には、勉強しながら準備資金も交付される、大変に嬉しい制度です。

 

経営開始型

一方の「経営開始型」とは、新規就農される方に、農業経営を始めてから経営が安定するまでの最大3年間、月12.5万円(年間150万円)を交付するものです。こちらは、非常に多くの地方に移住して新規就農した人が利用しています。

 

こちらは交付対象者の条件の中に「就農時の年齢が、原則49歳以下の認定新規就農者であること」「独立・自営就農であること」があり、新規に就農し、自身が経営者として活動していることが前提になっています。

 

農業を事業として始めたばかりの頃はうまく行かないことも多いもの、その時に交付金が出ると金銭的にも精神的にも助かります。こちらも、交付期間終了後、交付期間と同期間以上、営農を継続をしないなど返還を求められる場合や、交付対象者の条件から外れた場合には交付停止になりますので、条件面はよく確認しておきましょう。

青年等就農資金

「青年等就農資金」は、日本金融公庫が行っている無利子の融資です。
利用できるのは、市町村から青年等就農計画の認定を受けた個人・法人の新規就農者で、融資金額は3,700万円(特認1億円)となっています。返済期間は17年以内(うち据置期間5年以内)となっています。

 

農業生産用の施設・機械の購入費、農産物の処理加工施設や販売施設の整備費、家畜の購入費、果樹や茶などの新植・改植費、農地の借地料や施設・機械のリース料などの一括支払いなどが対象となります。

 

借入金額が大きくなると、利子だけでもかなりの金額になります。こちらは、融資なので返済の必要がありますが、利子をつけずに借りられる点では非常に助かる制度です。

補助金を使い、自分に合ったスタイルで農業を始めよう

ここまで、農業への就業スタイル、農業就業者に向けての補助金制度について見てきました。

 

趣味、仕事、兼業、半農半X、新規就農などさまざまなスタイルがあり、それぞれにメリットデメリットがあることがわかりました。いろいろなスタイルを知ることで、自分に合った就業スタイルはどのような形か、イメージが固まってきたのではないでしょうか。

 

上郡町でも、移住・定住者を受け入れています。興味がある方は、ぜひお問い合わせください。

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